天職に想う

欧米の教育を見ていて感じるのは、子どもたちそれぞれに
自分の「天職」の大切さを教えることを重視していることです。
子どもに合った、生きていくための仕事、それを大切にすることが、
人としてなにより必要なことなのです。

自閉症の教育に力を入れている英国での話です。
会話力のある自閉症、しゃべる自閉症とも言われる「アスペルガー症候群」は、
わが国では、LDなどとともに知的に遅れのない発達障害として知られていますが、
彼ら(アスピーズ)に向く職業の選択リストというのを見たことがあります。
(上野一彦・市川宏伸著 「図解 大人のアスペルガー症候群」ナツメ社 参照)

彼らがIT業界やデザイン業界を中心に活躍しているという話なのですが、
そのなかに動物の調教師、小工具修理師、事務員(ファイリング等の書類管理)、
タクシードライバーなどの名が含まれています。

「動物の調教師」は、友人に犬などをペットとして譲るときにも
トレーニング券を添えるといういかにも英国らしい職業なのですが、
人とのコミュニケーションを苦手としがちなアスペルガーの彼らにとって、
言葉のない動物の世話なんて無理だと思う方がいるかもしれません。

ところがそうではありません。
人間は複雑すぎて、嘘もつくし、感情の起伏も大きく、
もっとも扱いにくい動物かもしれません。
一般の動物は、日常的な世話をていねいに、きちんとしてくれる人に
もっともよくなつき、信頼するものです。
自閉圏の人々は、新しいことよりもやり慣れたことを
コツコツと続けることが得意ともいわれます。
もしも、動物が好きで、そうした世話に生き甲斐が感じるなら、
誰よりもすばらしい調教師になる可能性があります。

それは世界中にある伝統的な手工芸的職人的業の継承にもつながるかもしれません。
ひとつのことを地味でも極めるなかで、マイスターというか、
誰もが真似できぬ高度な境地に達するのです。

ここで言うタクシードライバーは、
「よく分からないからお客さん道を教えてください」などという
昨今よくみかける都会のドライバーではありません。
ロンドンのあの箱形のタクシーなどで経験する専門性の高いドライバー、
わが国で言えば各地の観光タクシーのドライバーとでも言えばよいでしょうか。
歴史に詳しく、地理に強ければ最高の観光タクシードライバーになる素質があります。

この職業の選択リストの最後にあるのは「統計学者」「物理学者」です。
ひとつのことを極めるには、周りに左右されず、コツコツとおのが道を行く
アスピーズ風の生活スタイルは、学者としてもっとも必要な素質なのかもしれません。

2011年9月21日 09:41 | | コメントを読む (0) | コメントを書く


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