もっと光を

文豪ゲーテの最後の言葉が「もっと光を」というセリフだったと聞いたことがある。
素直な(だった)私は、偉い人は最後まで深遠な言葉を言うものだと
感心したものだった。
もっとも、その後、目が弱っていたゲーテが病床で
「もっと窓を開けて明るくしてくれ」
といっただけだという説もあると聞いて
ちょっとがっかりもしたが、ちょっと安心もした。
しかし、自分は最後になにを見、なにを感じ、
なにを言うのだろうと、考えないでもない。

人間、死期が近づくと風景などがきれいに見えるものだと、
訳知り顔の友人から聞かされて以来、美しい景色をみても、
素直に「きれいだなー」と言い過ぎないようにしている。
もっとも、こどもが見聞きしたものに素直に感動する様は見ていても気持ちがいい。
それは素直さであり、感性であり、みずみずしさでもある。

しかし、ご当地の料理番組や名店巡りで、出てくる若い女優さんが
結局「おいしいー」としかいわないのは、
表現不足というより語彙不足なので、がっかりする。
「もっと気のきいたこと言わんかい」といいたくなるが、
これは普段からのトレーニングがものを言う。
しばし絶句し「なんだこの味は!」「このまったりした味・・・」なんてことになると、
漫画「美味しんぼ」(原作:雁屋哲、作画:花咲アキラ、小学館)の世界である。
比喩こそ表現なので、美味しさを食べもの以外のほめ言葉で表現してみる。
「なんという深さ・・・」「この広がり・・・」。
やり過ぎると「わけのわからんことばっかりいう奴」と友達を無くしかねない。

さて光にまつわる有名な話をもうひとつ。
戦後、糸賀一雄という障害者福祉の世界に偉い先生がいた。
この方は、障害を持った方の入所・教育・医療を行う施設
「近江学園」を滋賀県に創設し、園長となったのだが、
彼の唱えた理念は「この子らを世の光に」というものでした。

それまでは「この子らに世の光を」と同情と支援を求めるのが普通のところに、
こうした子どもたちの理解と支援を世の中の先導とすることが
真の福祉なのだと唱えたわけである。
「を」と「に」を入れ替えただけで、がらりと変わるのです。
なんという鮮やかな思想の転換でしょう。

2012年3月 7日 09:29 | | コメントを読む (0) | コメントを書く


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