日本のスピルバーグ ―作家 市川拓司―

11月23日、日本LD学会の設立20周年の記念式典がありました。
まだ発達障害どころかLDなどといった言葉もよく知られていなかった時代に、
学校の先生方、各地で啓発に取り組んでいた保護者の方々、
そして私たちのような専門家たちが集まってこの学会を立ち上げました。
まったく先行きが見えないままの船出でしたが、
この20年間で7,500人を超える大きな学会へと成長しました。

記念講演には『発達障害と私』というタイトルで、
発達障害であることをカミングアウトしておられる
作家の市川拓司さんにお願いしました。
市川さんは、映画化もされているベストセラー
『いま、会いにゆきます』で知られた小説家で、
これまで3回ほど、発達障害、特に自分のなかにある障害をテーマに
私とも楽しい対談をさせていただきました。

彼自身、アスペルガーといった診断を受けたこともあるようですが、
小さい頃はまさにADHD、それに字を書くことが苦手な書字障害的な
エピソードもたくさんあり、発達障害のデパートのようなところは、
私を始め、多くの方々から共感されるところです。

ご本人の言葉ですが、パソコンがなければ作家として大成したかどうかわからない。
イメージしたことをパソコン上で小説にし、インターネットで配信する
といった作風で、デビューしたところからインターネット作家とも呼ばれます。

LDと作家というと、矛盾を感じる方がいますが、
市川さんが好きな作家のジョン・アーヴィングなどもそうですし、
前回紹介した映画監督のスピルバーグの例からもわかるように、
他の人とは違う映像的な創造性を作品に活かしているのが特徴かもしれません。
私が市川さんを『日本のスピルバーグ』と呼ぶのもこの特性からなのです。

率直な語り口での記念講演は多くの方々に共感と感銘を与えました。
その後、お礼のmailをお送りしたのですが、素敵なご返事をいただきました。
その一部をご紹介いたします。

【上野】
市川さんの軽妙な語り口に皆さん、ご自身の発達障害性に多く気づかれたようです。
たくさんの方から20周年にふさわしいお話だったといわれました。

【市川】
そう言っていただけると、ほっとします。よかったです。
五十になり、ほんとに「五十にして天命を知る」ようになりました。
ぼくはきっと「世界中の優しさの総和を少しでも多くする」ために生まれてきたのだと。
この独自のパーソナリティーもそのためであり、
さまざまな不具合や苦しみもそのためであると。
ある本にキリストやアーサー王が傷付いているのは、
「あらかじめ傷付いた者のみが真の救済者になれるからだ」と書かれてあって、
ならばすべての苦しみも無意味じゃないな、と思うようになりました。
そのためには、どん欲に世界に自作をアピールしていくつもりです。

市川さんの作品は映像化しやすいことで知られ、海外での評価も高いと聞いています。
ヨーロッパでベストセラーになることも夢ではありません。
市川さんをこころから応援したいと思うのは私ひとりではありません。
彼は『日本のスピルバーグ』であると同時に、
私たちに『愛と優しさを伝える作家』なのです。

2012年12月12日 08:44 | | コメントを読む (1) | コメントを書く


コメント

 初めまして。私は、大分市内に住んでいます。今孫や友人の事でアスペルガー障害や学習障害等の本を買い求めては読んでいるところです。でも以前から娘の書棚にあった本を読んでみたいと思いつつも作家さんの名前が記憶できずでいましたが、やっと作家さんを知る機会ができたことを嬉しく思いました。いま、君に会いたいーーー。でしたか?本屋さんへ行き注文したいと思います。私は市川さんが心から優しい方なのだと思いました。

Posted by: 吉岡さち代(四女咲) | 2015年3月22日 22:46


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