父との別れ

 この夏、フィンランド、スウェーデン、ノルウェイの10日間の旅をしました。

 出発前、2年前から老人ホームに入居している父を見舞ったのですが、食欲がやや落ちているとのことでした。
 旅の半ばを過ぎた頃、父の様態が良くないとの連絡が、後を託してきた子ども達からあり、主治医との連絡などそれなりに大変でした。

 帰国後、空港から直接ホームに駆け付けました。まるで待っていたかのようだとの言葉通り、翌日静かに息を引き取りました。99歳にあと2か月という大往生でした。

 恥ずかしい話ですが、実は私と父との関係はあまりよくなく、会えばいつも二人の間には緊張関係がありました。60歳の時に私が著したエッセイ『LD教授の贈り物』(講談社)の前書きには、アスペルガー障害のある父に贈るという一節もあります。
 なんでも障害にしてはいけないのは重々承知なのですが、生涯、自分のしたいことをし続けてきた父は、家族にとっては大きな子どもがいるようで、なんで私の父は、ほかの父親とは違うのだろうと不思議に思ったものです。

 母が10年前に亡くなるまでは、そんなわがままも多少のブレーキが利いたのですが、晩年は、自分の独特の生き方というものがますます高じ、その調整に苦しみました。
 認知症も発症し、安全確認や健康面などから、もう無理だと決断し、老人ホームに何とか入れたのですが、周りに溶け込むわけでもなく、主治医の投薬で何とか生活のリズムを取り戻しました。
 おかげさまで、一方的な会話を聞くだけではありましたが、比較的穏やかな日々が初めて訪れ、やがて私しかわからなくなってしまいました。そんな父と会えば、幼児に帰っていく姿に寂しさも感じましたが、最後にやっと親孝行が間に合ったような気もしました。


 親との別れは、だれしも経験することですが、長い74年間もの親子の付き合いに別れが来たとき、本当に感謝の気持ちしかわかなかったことも不思議な体験でした。
 私事をお話ししてしまったことお許しください。

2016年10月 5日 10:00 | | コメントを読む (0) | コメントを書く


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